物理学ミニマム(電磁気学)2
定義6.30
電磁場のエネルギー・運動量テンソル
時間空間成分の 倍( )をポインティングベクトルといい、
空間空間成分をマクスウェルの応力テンソル( )という。
注6.31
ポインティングベクトルは次のように書ける。
応力テンソルは次のように書ける。
注6.32
エネルギー・運動量テンソルは通常のエネルギー(ハミルトニアン)を拡張したものである。
ここで、 。
普通の古典力学では時間を特別扱いするが、時間と空間を同等に扱ったものである。
ただし、正確には上記の定義に、「適当な全微分」( )を加え、
電荷がないときのマクスウェルの式( )を使って整理した。
このテンソルは各点で定義された関数であるが、物理的に意味のある量は、
それを空間で積分して出す。
そのとき、「全微分」はあってもなくても結果に違いが出ない。
そこで、テンソルが対称になるよう加えたのである。
例6.33
応力テンソルを使って、距離 離れた2つの荷電粒子( と )の間に働く力を計算する。
(これは、系6.21、例6.23を見れば、 とわかる。)
2つの粒子の中間に、粒子間の直線に垂直な平面を考える。
応力テンソルが名前の通り応力テンソルなら、
となる。(積分は平面上で。)
を平面上の各点で出し、積分すると、正しい値になる。
これは、「それぞれの荷電粒子を含む空間が押し合っている」ということである。
定理6.34
(証明)
計算するのみ。□
定義6.35 電磁場の運動量
これは、エネルギー とあわせてベクトルになるので、
相対論の一般論から運動量と考えられる。
定理6.36
電磁場において(物質がない場合)、
(エネルギーは を体積積分したもの
はその体積の表面の面素を表すベクトル)
(証明)
定理6.34より、 。
これを体積積分する。□
注6.37
定理6.36で言っていることは、ポインティングベクトルが「エネルギーの流れ」
ということだが、定義6.35で定義した運動量と定数倍 の違いしかない。
これは光においては「エネルギー = 運動量 x c」を示唆している。
注6.38
定理6.36と同様に
右辺は「運動量の時間微分」に等しいのだから「力」と考えられる。
すなわち、 を応力テンソルとよぶのは、もっともらしい。
定義6.39
ポテンシャルにはゲージ不変性による不定性があるのだった(定理6.8)。
その不定性を利用して、 とする。
(あるいは「不定性を減らすために条件をつける」とも言える。)
これをローレンツゲージとよぶ。
この条件は3次元の量で書くと、 。
定理6.40 波動方程式
物質がない場合、ポテンシャルはローレンツゲージで以下を満たす。
これは書きなすと、 。
(証明)
に を代入し、
を使う。□
定理6.41 放射ゲージ
ローレンツゲージの中でさらに とできる。
(証明)
ローレンツゲージで があったとする。
これは を満たす。
そこで、 のように を選び、
とする。□
注6.42 放射ゲージでの波動方程式
定理6.42 平面波
放射ゲージの波動方程式に以下の解がある。
ただし、 、 は定数3次元ベクトルで進行方向に垂直。
(証明)
波動方程式を満たすことは、直接確かめられる。
に代入すると、 。□
系6.43
特に、これは進行方向に対し横にゆれる横波である。
横波なので、独立なものが2つある。
注0.5
研究者としてすばらしい業績をあげながら、物理の様々な分野で名著とよばれる
教科書が書けたランダウ先生(とリフシッツ先生)は天才だったんだとしみじみ思う。
しかし、それはそれとして、砂川先生の本もすばらしいと思う。