初等量子力学1問1答 1/4
元ネタ:量子力学演習 後藤憲一 他
問題
問1
Plankの放射公式を導け。
答1
問2
Stefan-Boltzmannの公式を導け。
答2
問3
を導け。
答3
問4
調和振動子の量子化を論ぜよ。
答4
問5
下図のように高さ のポテンシャルの障壁に向かって
粒子が左から来たときの透過確率を求めよ。
ただし、解答のタイプが面倒なので と限定する。
ヒント:やる事はいつも同じである。
答5
解答
問1
そもそもPlankの放射公式とは何かと言うと、黒体放射において、
振動数が と の間の光がもつ単位体積あたりのエネルギーの公式である。
光子1つのエネルギーは 。
(「光子」の2文字を出すのにキーボードを30回くらいたたかなければならない。)
この振動数の光子が Maxwell-Boltzmann 分布しているとすると、平均エネルギーは
光が1辺 の箱の中に閉じ込められているととすると、それは
(、、 は正の整数)
のように書けるが、それは
のような光が飛んでいるということである。
この光の進行方向を表すベクトルは で、振動数は
である。
「許される光子の振動数」は 達で番号付けられるのである。
つまり、なんとなく と書いたものは連続的に存在するのではない。
そこで、 達の世界、つまり、整数格子を考える。
と の間に存在する振動数の数は、この整数格子の世界で
半径が の球と半径が の球の間にある格子点の数である。
これをまじめに考えるのは大変だろうと思うし、意味もない(だろう)。
無限の整数格子でどこまでも大きい整数まで考えるのだから、ぎゅっと縮めて
「その範囲にある格子点の数はその体積に等しい」と考える。
ただし、
・光は振動方向が2つあること
・正の整数を数えればよいから球の1/8のみであること
・ の3乗は全体の体積 であること
を考えると、 と の間に存在する振動数の数は、
よって、振動数が と の間の光がもつ単位体積当たりのエネルギーは
となる。
最近数学の勉強してたら「空間はデフォルトで3次元なんだー」と思うようになった。
「既約閉部分集合の鎖の長さの上限」とか考えないで済むのは楽である。
問2
Stefan-Boltzmannの公式とは、黒体の単位表面積から単位時間内に
放出される全エネルギーの公式である。
当然、Plankの公式を積分するのである。
Plankの式を と書く。
振動数を固定した単位表面積から単位時間内に放出されるエネルギーは、
と書ける。
は光が放出される面の法線と光との角度を表し、 は立体角である。
で計算すると、これは
となる。よって、
これは変数変換をすると積分できるらしく(普通なら一生しないだろう)
()
が導かれる。
こんな計算で現実とあってしまうのは驚きで、美しいと思う。
には、物理の基本定数やら円周率やら勢揃いである。
ちなみに、当然プランクの公式より先に発見されていたもので、
ステファンとボルツマンは上の積分をした人たちではない。
問3
ぼんやりした式だから、ぼんやり導けばよいと思う。
そもそも とかって何だろうかというと、「だいたいの広がり」である。
だから、まず次のようなものを考える。
[tex:\delta x\hspace{3}=\hspace{3}x\hspace{3}-\hspace{3} ]
[tex:\delta p\hspace{3}=\hspace{3}p\hspace{3}-\hspace{3}
当然 である。
よって などと考えるのが妥当だ。
そこで次のような式を考える。
ところで、 。
よって、 。
任意の実数 で成り立つのだから、懐かしい2次式の判別式を用いて
大学では「 の次元は角運動量と同じ」を主張される先生がけっこういた。
それを強調する理由は未だにわからない。
問4
ポテンシャルエネルギーが 。
よって、シュレディンガー方程式は
(実際、このエントリーはこれが書きたかっただけかもしれない。)
とおくと、
とおくと、
。
これが有限な解(波動関数)を持つためには、
でなければならない。
(解を級数展開してそれが無限級数にならないようにする。)
そのときの解はHermite多項式 となる。
規格化定数を としてまとめると、波動関数は、
エネルギーは
となる。
同じことを演算子でやる。
とおくと、交換関係は
シュレディンガー方程式は
ただし、 とした。
さらに、
とおくと、交換関係と方程式は
となる。
ここで、基底状態 を
で定義すると、励起状態は(規格化定数を除いて)
と書ける。これらのエネルギーは、やはり、
となる。
波動関数も出せる。
まず、基底状態は
より、
励起状態は
この多項式部分はちゃんとHermite多項式になるのだそうである。
なんと美しいことであろうか。
問5
で
で 。
その解は、 とおいて、
で
で
で 。
粒子は左から入射するので、 とする。
あとは、境界で値と傾きが等しいとおいて、
。
これより、
。
したがって、透過率と反射率は
。
歌を忘れたカナリアは後ろの山に棄てましょか?いえいえ、それはかわいそう。
物理を忘れた物理屋・・・にならないようにしよう。