初等量子力学1問1答 2/4
元ネタ:量子力学演習 後藤憲一 他
問題
問1
シュレディンガー方程式の極座標表示を書け。
答1
問2
中の電子の束縛状態を求めよ。
答2
問3
量子力学における散乱の一般論(クーロン力を除く)を述べよ。
答3
問4
クーロン力による散乱( )を解け。
答4
解答
問1
軌道角運動量演算子
を使うと、
問2
問1のシュレディンガー方程式を解けばよい。
ただし、角運動量演算子の固有関数である球面調和関数
を使い、 とおく。
シュレディンガー方程式は
となる。
無限遠での振る舞いは を見ればよいが、
無限遠で波動関数が 0 になるには、 が負でなければならない。
シュレディンガー方程式は、 とおき、
とおくと、
ところで、波動関数の原点近くでの振る舞いは を見ればよいが、
( で書いた)方程式の主要部分は
となり、 と考えられる。
(こんなことを大学入試の数学の答案に書いたら点がもらえる気がしない。)
これから、 とおき、
の原点で正則な をさがす。
実は、上は合流型超幾何微分方程式で、原点で正則な解は合流型超幾何関数
で与えられるそうである。もちろん、私の責任ではない。
しかるに、この関数は が 0 か負の整数でないと、
無限遠で が抑えるよりはやく発散してしまう。
したがって、物理的な解は、
のときに与えられることになる。
このとき、 は Laguerre の多項式 になる。
まとめると、
ただし、 は決してlatexで打ちたくないような規格化定数である。
このような式変形が歴史的にどのくらいの時間をかけて発見されたのか、
ちょっとめまいがしそうである。
あと、やっぱり、気になるのは「物理的でない解」たちの行方である。
問3
クーロン力を除いちゃったら何の意味があるのかと思うと、湯川ポテンシャルがあった。
クーロンの場合もちょっとひねれば使える。
束縛状態でなけば、波動関数を規格化することはできないが、それがシュレディンガー
方程式に従うこと、その絶対値の二乗が「粒子がその辺にいる確率」(に比例する量)を
表すことに変わりはない。
中心(原点)に何かがある場合の波動関数は中心から遠いところでは、
と書けると期待できる。
ここで は、運動量 で 方向に進む平面波を表し、残りの部分は、
中心の何かに散乱されて広がっていく波を表す。つまり、前者が入射波で後者が散乱波である。
波はあくまで確率を表すわけだが、「確率の流量」は
方向:
(それ以外の) 方向:
となる。
これがもっともらしい点は、 方向への流量が に反比例しているところである。
(クーロン力の場合、力が無限遠方にまで届くので、そうならない。)
こういう波動関数が見つかれば、微分断面積は
となる。
これは、「 方向への流れ(を立体角 分まとめたもの) / 方向への流れ」、
つまり、「 に向かう粒子の(確率の)流れの入射に対する割合」である。
これは面積の次元を持ち、物理的には、これを積分したもの
が全断面積(「中心にあるやつの大きさ」)を意味することになる。
中心にある何かが、 にしか依存しないなら、 は に依存しないだろう。
また、角運動量を固定して波動関数を
とする( はLegendre多項式である)と、シュレディンガー方程式は、
となる。
ここで、 とおくと、
となる。
では、定数を適当に割り振って
と書けることがわかる。(解が に依るから と書いた。)
これらの道具立てであらためて波動関数を書くと、
和は について から まで取る。
ところで、平面波は次のように展開できる。
ここで、 は球Bessel関数で、 では
が知られている。
そこで、 を で評価し、
中心に向かっていく波を表す の前の係数を におくと、
期待された形の波動関数になる。
それは である。
すなわち、
である。
あらためて、 での形を書くと、
全断面積は
。
問4
ポテンシャルが無限遠でも生き残るので問3の方法は使えない。
ので、なんと、具体的に解く。
( )
とおくと、シュレディンガー方程式は
ただし、 。
だが、 には依存しないので、 の部分は消える。
とし、 とおくと、
となる。
ここで、 とおくと、 のとき上の式の解になる。
そこで、そのようにとって、 とすると、
。
これは合流型超幾何微分方程式で、その解は
(ただし )となる。
さらに難しい計算を繰り返して、 の形を求めると、
となるそうである。
これから確率の流れを計算すると、
となり、結局、
となる。具体的には、
となる。
これは古典的なRutherford散乱の断面積に一致する。
こんな大計算をして答が一致したときの気持ちはどうだったのだろう。