物理学ミニマム(古典力学)2
定義1.35
をハミルトニアンという。
ハミルトニアンは普通 の関数と考える。
定理1.36 ハミルトン方程式(正準方程式)
(証明)
オイラー・ラグランジュ方程式と運動量の定義を使って
よって、
□
定義1.37 ポアッソンの括弧
をポアッソンの括弧とよぶ。
定理1.38 ポアッソンの括弧の性質
ポアッソンの括弧は次の性質を持つ。
1)
2) が定数のとき、
3)
4)
5) (ヤコビの恒等式)
(証明)
直接的な計算より。□
定理1.39
(証明)
に正準方程式を使う。□
注1.40
通常、物理現象の本質は時間の経過によって変わらないと考える。
つまり、「電子の質量が時間経過とともに変わっていく」などということは考えない。
すると、物理量の変化は、オイラー・ラグランジュ方程式(正準方程式)のみに
従っているということになるだろう。
それは「物理量は直接 に依らない」ということを意味する。
以下では、その場合のみを考える。
すると、 となる。
(「雨粒の質量が時間経過とともに変わっていく」ということはある。
しかし、そのようなものをここでは考えないということである。)
注1.41
正準方程式は となる。
定理1.42
保存量と保存量のポアッソンの括弧は保存量である。
(証明)
を保存量とする。
すると、 。
ヤコビの恒等式より、 。□
注1.43
注1.40で述べたように、ここでは物理量は直接 に依らないとしている。
しかし、定理1.42は保存量が直接 に依っていても成り立つ。
証明は、定理1.42と同様に直接的にできる。
注1.44
定理1.42によれば、2つの保存量から「新しい保存量」が見つかる。
ただし、そのように無限個の保存量が作れるわけではない。
保存量の数は決まっているのだから。
定理1.45 ハミルトン・ヤコビの方程式
作用の式に「オイラー・ラグランジュ方程式を満たす座標」を代入し、
を終点の時刻 の関数と考えると、
(ただし、 )
が成り立つ。
(証明)
に対し、
であったが、今の場合、第2項は になる。
(ここでは、 の変化による の変化を見たい。)
また、時刻 での振る舞いを見たいので、 とすると、 。
よって、 。
ところで、 。
これらをまとめるとハミルトン・ヤコビの方程式になる。□