圏論初級徒然

圏論ではなるべく集合的な考え方(元を1つずつ見るような考え方)から離脱すべきだろう。
しかし、hom 集合は重要な役割を果たしているような気がする。
よって、hom 集合(や集合一般)の扱い方に習熟しておいてもよいような気がする。
 
補題
以下の3つは同値である。
(1) f は同型射。 (集合ではない世界)
(2) f_*全単射。(集合の世界)
(3) f^*全単射。(集合の世界)
 
Riehlによると、モノ、エピは名詞で、モニック、エピックは形容詞らしい。
「環境会議」(環境に関する会議)のように名詞を形容詞的に使うことはよくあるので、
モノ射と言ってもよいと思うが、モノとだけ言っても悪いことはあるまい。
(一般論として、術語の権威ある訳者は、名詞か形容詞かの違いに注意を払ってほしい。)
 
補題
(1) f はモノ \Longleftrightarrow f_*単射
(2) f はエピ \Longleftrightarrow f^*単射
 

補題
Set において、モノは単射、エピは全射、同型射は全単射
 
こういうものの証明はいろいろおもしろいと思う。
以下、f\hspace{3}:\hspace{3}X\hspace{3}\longrightarrow \hspace{3}Y とする。
 
モノ \Longleftrightarrow 単射
f がモノなら、x,\hspace{3}x'\hspace{3}:\hspace{3}1\hspace{3}\longrightarrow \hspace{3}X に対し、fx\hspace{3}=\hspace{3}fx'\hspace{3}\Rightarrow\hspace{3}x\hspace{3}=\hspace{3}x' なのだった。
これは f単射性を示している。
この逆は明らか。
 
エピ \Longleftrightarrow 全射
h,\hspace{3}k\hspace{3}:\hspace{3}Y\hspace{3}\longrightarrow \hspace{3}Z に対し、hf\hspace{3}=\hspace{3}kf は、「f の像の上で h\hspace{3}=\hspace{3}k」を意味する。
これをよく考えると、証明できたことになる。
こちらの証明はモノのときと比べて、少し「ぼんやり」な気がするのはなぜだろう。
 
定義
右逆射をセクションといい、左逆射をレトラクションという。
セクションは漢字で断面、レトラクションは引き戻しなどと書くらしい。
x\hspace{3}\longrightarrow ^s\hspace{3}y\hspace{3}\longrightarrow ^r\hspace{3}x\hspace{3}rs\hspace{3}=\hspace{3}1_x なら、
sr に対するセクション、rs に対するレトラクションという。
(「The map s is a section to r.」の「to」のニュアンスがまだよくつかめないので
 「に対する」と書いた。
 これを「r のセクション」のように「の」と訳している人も多いような気がするが、、、。)
また、このとき、「xy のレトラクト」という。 
ちなみに、retractは普通の英語では動詞のようだが、数学では堂々たる名詞として
使われている。
また、右逆射を分裂モノ、左逆射を分裂エピともいう。
 
元ネタ:Category theory in context Emily Riehl