代数曲線入門1問1答 3

元ネタ:代数曲線 梶原健
 
問題



問1 以下を示せ。
既約多項式 F\hspace{3}\in\hspace{3}k[X]GH\hspace{3}(G,\hspace{3}H\hspace{3}\in\hspace{3}k[X]) を割り切るなら、
FG または H を割り切る。
答1



問2 以下を示せ。
k[X_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}X_{n-1}] の世界で既約多項式が素元であるとすると、
既約多項式 F\hspace{3}\in\hspace{3}k[X_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}X_{n-1}]GH\hspace{3}(G\hspace{3},H\hspace{3}\in\hspace{3}k[X_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}X_n])
割り切るとき、 FG または H を割り切る。
答2



問3 以下を示せ。
既約多項式 F\hspace{3}\in\hspace{3}k[X_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}X_n]K\hspace{3}=\hspace{6}k(X_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}X_{n-1})
係数環とする X_n多項式としても既約である。
答3



問4 以下を示せ。
既約多項式 F\hspace{3}\in\hspace{3}k[X_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}X_n]GH\hspace{3}(G\hspace{3},H\hspace{3}\in\hspace{3}k[X_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}X_n])
割り切るとき、 FG または H を割り切る。
答4




問5 以下を示せ。
定数でない多項式 F,\hspace{3}G\hspace{3}\in\hspace{3}k[X,\hspace{3}Y] が共通因子を持たないならば、
V(F,\hspace{3}G)\hspace{3}=\hspace{3}V(F)\hspace{3}\cap\hspace{3}V(G) は有限個の点からなる。
答5



問6 以下を示せ。
定数でない F\hspace{3}\in\hspace{3}k[X_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}X_n] が既約 \Longleftrightarrow (F(X_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}X_n)) が素イデアル
答6



問7 以下を示せ。
定数でない F(X) が既約 \Longleftrightarrow (F(X)) が極大イデアル
答7



問8 以下を示せ。
既約多項式 F\hspace{3}\in\hspace{3}k[X,\hspace{3}Y] の零点集合 V(F) は既約。
これが無限集合なら、I(V(F))\hspace{3}=\hspace{3}(F)
答8



問9 以下を示せ。
k が無限体のとき、A^2(k) の有限で既約な代数集合は点のみ。
答9



問10 以下を示せ。
A^2(k)A^2(k) の既約な代数的集合である。
答10



問11 以下を示せ。
k が無限体のとき、A^2(k) の既約な代数集合で無限なものは、
A^2(k) を除くと、既約多項式 F に対する V(F) のみ。
答11



問12 以下を示せ。
代数的閉体 k を係数とする多項式 F\hspace{3}\in\hspace{3}k[X,\hspace{3}Y]
互いを割り切らない既約多項式 F_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}F_m
F\hspace{3}=\hspace{3}F^{e_1}_1\hspace{3}\cdots\hspace{3}F^{e_1}_m とかけるとする。
このとき、 V(F)\hspace{3}=\hspace{3}V(F_1)\hspace{3}\cup\hspace{3}\cdots\hspace{3}\cup\hspace{3}V(F_m)
I(V(F))\hspace{3}=\hspace{3}(F_1\hspace{3}\cdots\hspace{3}F_m)
答12



解答



問1
FG を割り切らないとすると、 A,\hspace{3}B\hspace{6}\in\hspace{3}k[X] があって、
AF\hspace{3}+\hspace{3}BG\hspace{3}=\hspace{3}1 とできる。
すると、 AFH\hspace{3}+\hspace{3}BGH\hspace{3}=\hspace{3}H
これより、HF で割れる。



問2
G\hspace{3}=\hspace{3}\sum a_iX^i_n,\hspace{10}H\hspace{3}=\hspace{3}\sum b_jX^j_n,\hspace{15}a_i,\hspace{3}b_j\hspace{3}\in\hspace{3}k[X_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}X_{n-1}] とおく。
a_i\hspace{3}\in\hspace{3}k[X_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}X_{n-1}] がすべて F で割り切れるか
b_j\hspace{3}\in\hspace{3}k[X_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}X_{n-1}] がすべて F で割り切れるなら、
GHF で割り切れる。
a_i,\hspace{6}b_j のどちらにも割り切れないものがあるとすると矛盾することを示す。
i,\hspace{6}j を大きい順に F で割り切れるか見ていき、
最初に割り切れなかったものを、それぞれ i_0,\hspace{6}j_0 とする。すると、
(G\hspace{3}-\hspace{3}\sum_{i>i_0}a_iX^i_n)(H\hspace{3}-\hspace{3}\sum_{j>j_0}b_jX^j_n)\hspace{3}=\hspace{6}a_{i_0}b_{j_0}X^{i_0+j_0}_n\hspace{3}+\hspace{3}\cdots
の左辺は F で割り切れ、右辺は割り切れないという矛盾に逢着する。



問3
K[X_n] の世界で F\hspace{3}=\hspace{3}GH となったとする。
GH の分母を払えば FM\hspace{3}=\hspace{3}G'H' のように書ける。
ただし、M は、 GH の分母をかけ合わせたもので、
G'H'GH の分子たちである。
M\hspace{3}\in\hspace{3}k[X_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}X_{n-1}] だから、問2より、
M を割り切る既約多項式は、G'H' を割り切る。
M を割り切る既約多項式で割っていくと、 F\hspace{3}=\hspace{3}G''H'' となる。
F は既約なので、G''H'' のどちらかは k になる。
すると、 G\hspace{3}\in\hspace{3}K または H\hspace{3}\in\hspace{3}K が言えたことになる。



問4
帰納法で証明する。
問2で FX_n を含まない場合を示した。
そこで以下では、含む場合を考える。
問3より FK[X_n] の既約多項式でもある。
K[X_n] の世界で考えると、問1より、 FGH を割り切る。
以下では、G を割り切るとする。すると、分母を払って、 GM\hspace{3}=\hspace{3}FL と書ける。
ただし、 M\hspace{3}\in\hspace{3}k[X_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}X_{n-1}]
F は既約なので M を割り切る既約多項式F を割り切らない。
(唯一可能そうなのは、その多項式F と一致する場合だが、それは F
 X_n を含むという仮定に反するので考えない。)
すると、問2より、M を割り切る多項式L を割り切る。
そのような多項式で割っていくと、 G\hspace{3}=\hspace{3}FL' となる。



問5
多項式は有限個の既約多項式に分解できるから、最初から既約多項式で考える。
F,\hspace{3}G\hspace{3}\notin\hspace{3}k[X] のとき、これらは k(X) を係数とする Y多項式としても既約。
したがって、 k(X)[Y] の世界で PF\hspace{3}+\hspace{3}QG\hspace{3}=\hspace{3}1 と書ける。
F または Gk[X]多項式の場合も上のような式ができる。
分母を払って、 AF\hspace{3}+\hspace{3}BG\hspace{3}=\hspace{3}C\hspace{6}(A,\hspace{3}B\hspace{3}\in\hspace{3}k[X,\hspace{3}Y]\hspace{18}C\hspace{3}\in\hspace{3}k[X]\hspace{3}\backslash\hspace{3}\{0\})
したがって、 (a,\hspace{3}b)\hspace{3}\in\hspace{3}V(F,\hspace{3}G) なら C(a)\hspace{3}=\hspace{3}0 である。
しかるに C の根は有限個のはずである。



問6
\Rightarrow は問4より明らか。
\Leftarrow は「整域において素元は既約元」だから明らか。
F\hspace{3}=\hspace{3}GH と書けたとすると、 GH\hspace{3}\in\hspace{3}(F)
 すると、素イデアルであるから、GHF で割り切れる。
 たとえば、G が割り切れ G\hspace{3}=\hspace{3}FL と書けたとすると、 F\hspace{3}=\hspace{3}FLH
 よって、 1\hspace{3}=\hspace{3}LH となるので、H は単元。)



問7
1変数の多項式環は単項イデアル整域。
単項イデアル整域の 0 でない素イデアルは極大イデアル



問8
ここまでの総復習的問題。
まず、問6より、(F) は素イデアル
イデアルに対応する代数的集合は既約。
次に I(V(F))\hspace{3}=\hspace{3}(F) を示す。
I(V(F))\hspace{3}\supset\hspace{3}(F) は前にやったが常識的にも明らか。
I(V(F))\hspace{3}\subset\hspace{3}(F) を示すのに G\hspace{3}\in\hspace{3}I(V(F)) とする。
V(G)\hspace{3}\supset\hspace{3}V(I(V(F)))\hspace{3}=\hspace{3}V(F) だから、 V(F,\hspace{3}G)\hspace{3}=\hspace{3}V(F)\hspace{3}\cap\hspace{3}V(G)\hspace{3}=\hspace{3}V(F)
これが無限集合だから、問5より、FG が共通因子を持つ。
しかるに、F は既約なので G を割り切り、 G\hspace{3}\in\hspace{3}(F)
よって、 I(V(F))\hspace{3}=\hspace{3}(F) が示された。



問9
1点 (a,\hspace{3}b)\hspace{3}\in\hspace{3}A^2(k) は [tex:(a,\hspace{3}b)\hspace{3}\in\hspace{3}V*1] であるから代数的集合。
2つに分割できないから既約。
有限な代数的集合は1点のみの場合を除くと分割できるので既約ではない。



問10
I(A^2(k))\hspace{3}=\hspace{3}(0) は明らか。
(0) は素イデアルだから、 A^2(k) は既約。



問11
無限で既約な代数的集合で A^2(k) に一致していないものを V とする。
すると、I(V) は定数でない多項式 F を含む。
I(V) は素イデアルだから、F の既約因子のどれかは I(V) に含まれる。
したがって、最初から F として既約かつ I(V) に含まれるものを選んでよい。
ここで、もし、 G\hspace{3}\in\hspace{3}I(V)\hspace{3}\backslash\hspace{3}(F) があれば、
V(F,\hspace{3}G)\hspace{3}=\hspace{3}V(F)\hspace{3}\cap\hspace{3}V(G)\hspace{3}\supset\hspace{3}V(I(V))\hspace{3}=\hspace{3}V
となるが、問5より、 V(F,\hspace{3}G) は有限集合のはずで矛盾する。
つまり、そういう G はないのだから、 I(V)\hspace{3}=\hspace{3}(F)
このとき、 V(F)\hspace{3}=\hspace{3}V(I(V))\hspace{3}=\hspace{3}V



問12
x\hspace{3}\in\hspace{3}X を固定すると、 F(x,\hspace{3}Y)Y についての多項式である。
もしかすると、これがたまたま定数になってしまうこともあるだろうが、
それは有限個の場合である。
もし、無限個の場合で定数なら、もともと F は定数ということになるから。
したがって、 V(F^{e_i}_i)\hspace{3}=\hspace{3}V(F_i)\hspace{3} は無限集合になる。
したがって、問8より、これは既約で I(V(F_i))\hspace{3}=\hspace{3}(F_i)\hspace{3} となる。
前々日の問5より、V(F)\hspace{3}=\hspace{3}V(F_1)\hspace{3}\cup\hspace{3}\cdots\hspace{3}\cup\hspace{3}V(F_m)
また、前々日の問9より、
I(V(F))\hspace{3}=\hspace{3}I(V(F_1)\hspace{3}\cup\hspace{3}\cdots\hspace{3}\cup\hspace{3}V(F_m))\hspace{3}=\hspace{3}(F_1)\hspace{3}\cap\hspace{3}\cdots\hspace{3}\cap\hspace{3}(F_m)
さらに、F_i たちは互いに素だから、 (F_1)\hspace{3}\cap\hspace{3}\cdots\hspace{3}\cap\hspace{3}(F_m)\hspace{3}=\hspace{3}(F_1\hspace{3}\cdots\hspace{3}F_m)
よって、 I(V(F))\hspace{3}=\hspace{3}(F_1\hspace{3}\cdots\hspace{3}F_m)

*1:X\hspace{3}-a)(Y\hspace{3}-\hspace{3}b