代数曲線入門1問1答 2

元ネタ:代数曲線入門 梶原健

問題



問1
ヒルベルトの基底定理を述べよ。
答1



問2
ヒルベルトの基底定理を証明せよ。
答2



問3 以下を示せ。
A^n(k) の代数的集合は、有限個の多項式の共通零点に等しい。
答3



問4 以下を示せ。
Rネーター環 \Longleftrightarrow イデアルが極大条件を満たす
答4




問5 以下を示せ。
Rネーター環\pi\hspace{3}:\hspace{3}R\hspace{3}\longrightarrow \hspace{3}R'全射なら R' もそうである。
答5



問6 以下を示せ。
ネーター環 R の分数化 S^{-1}Rネーター環である。
答6



問7
代数的集合が既約であるとはどういうことか述べよ。
答7



問8 以下を示せ。
V が既約 \Longleftrightarrow V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_1\hspace{3}\cup\hspace{3}V_2 なら  V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_1 or V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_2
答8



問9 以下を示せ。
V が既約 \Longleftrightarrow I(V) が素イデアル
答9



問10 以下を示せ。
A^n(k) の空でない代数的集合は一意的に既約成分に分解できる。
答10




解答



問1
ネーター環 R を係数とする多項式環 R[X_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}X_n]ネーター環である。



問2
がんばれ。



問3
W\hspace{3}=\hspace{3}I(V) などとなるだろうが、I(V)ネーター環である。



問4
Rネーター環 \Rightarrow イデアルが極大条件を満たす
増大するイデアルの列を I_m とする。
I\hspace{3}=\hspace{3}\cup I_mイデアルであり、有限生成である。
その有限生成の元を含むイデアルを集めてくれば、それ以上のイデアル
「同じもの」となる。
 
Rネーター環 \Leftarrow イデアルが極大条件を満たす
Rイデアル I の有限部分集合が生成するイデアルの列を考えると、
仮定より極大なもの I_0 が存在する。
もし、 I_0\hspace{3}\neq\hspace{3}I なら、 x\hspace{3}\in\hspace{3}I\hspace{3}\backslash\hspace{3}I_0 なる元に対し I_0\hspace{3}+\hspace{3}Rx とすれば、
I_0 より大きい有限生成なイデアルができてしまう。これは矛盾である。
よって、 I_0\hspace{3}=\hspace{3}I であり、I が有限生成であることがわかる。



問5
R'イデアルの増大列は Rイデアルの増大列を生む。
R は極大条件を満たすから R' も満たす。



問6
S^{-1}RイデアルRイデアルI\hspace{3}\cap\hspace{3}S\hspace{3}=\hspace{3}\emptyset となるものに
よって S^{-1}I と書ける。
したがって、R が極大条件を満たせば、S^{-1}R も満たす。



問7
代数的集合 V が異なる2つの代数的集合 V_1V_2 の和集合で
表せるとき( V\hspace{3}=\hspace{3}V_1\hspace{3}\cup\hspace{3}V_2 のとき)、V は可約という。
空集合でない代数的集合が可約でないとき既約という。



問8
V が既約 \Rightarrow V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_1\hspace{3}\cup\hspace{3}V_2 なら V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_1 or V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_2
V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_1\hspace{3}\cup\hspace{3}V_2V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_1 でもなく V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_2 でもないとする。
すると、 V\hspace{3}=\hspace{3}(V_1\hspace{3}\cap\hspace{3}V)\hspace{3}\cup\hspace{3}(V_2\hspace{3}\cap\hspace{3}V) であり、
(V_1\hspace{3}\cap\hspace{3}V)\hspace{3}\neq\hspace{3}(V_2\hspace{3}\cap\hspace{3}V) だから、V は可約となる。
 
V が既約 \Leftarrow V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_1\hspace{3}\cup\hspace{3}V_2 なら  V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_1 or V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_2
V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_1\hspace{3}\cup\hspace{3}V_2 なら V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_1 or V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_2 」のときに、
V\hspace{3}=\hspace{3}V_1\hspace{3}\cup\hspace{3}V_2 だったとする。
すると、 V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_1 or V\hspace{3}\sub\hspace{3}V_2 となるが、
それでは V_1V_2V と等しくなり、V が既約とわかる。



問9
V が既約 \Rightarrow I(V) が素イデアル
V が既約とする。
すると、 I(\emptyset)\hspace{3}=\hspace{3}k[X_1,\hspace{3}\cdots,\hspace{3}X_n] であり、
代数的集合の一致とそのイデアルの一致が同値だから、
I(V)\hspace{3}\neq\hspace{3}k[X_1,\hspace{3}\cdots,\hspace{3}X_n] である。
FG\hspace{3}\in\hspace{3}I(V) とすると、 V\hspace{3}=\hspace{3}V(I(V)\hspace{3}\sub\hspace{3}V(FG)\hspace{3}=\hspace{3}V(F)\hspace{3}\cup\hspace{3}V(G) だが、
V が既約なのだから、 V\hspace{3}\sub\hspace{3}V(F) または V\hspace{3}\sub\hspace{3}V(G)
つまり、 F\hspace{3}\in\hspace{3}I(V) または G\hspace{3}\in\hspace{3}I(V)
 
V が既約 \Leftarrow I(V) が素イデアル
これを示すのに対偶を使う。(高校生のようだ。)
V が既約でないとする。
特に、V\hspace{3}=\hspace{3}\emptyset なら、 I(V)\hspace{3}=\hspace{3}k[X_1,\hspace{3}\cdots,\hspace{3}X_n] となり、これは素イデアルではない。
V\hspace{3}\neq\hspace{3}\emptyset なら、異なる代数的集合を用いて、 V\hspace{3}=\hspace{3}V_1\hspace{3}\cup\hspace{3}V_2 と書ける。
F_1\hspace{3}\in\hspace{3}I(V_1)\hspace{3}\backslash\hspace{3}I(V),\hspace{24}F_2\hspace{3}\in\hspace{3}I(V_2)\hspace{3}\backslash\hspace{3}I(V)  を用意すると、
V(F_1F_2)\hspace{3}=\hspace{3}V(F_1)\hspace{3}\cup\hspace{3}V(F_2)\hspace{3}\supset\hspace{3}V_1\hspace{3}\cup\hspace{3}V_2\hspace{3}=\hspace{3}V となる。
よって、 F_1F_2\hspace{3}\in\hspace{3}I(V) となるので、I(V) は素イデアルではない。



問10
(略解)
・有限個の既約な代数的集合に分解できること。
ある代数的集合が既約成分に分解できないとして、矛盾を導けばいい。
それ自身が既約だとそれはもう分解されていることになるから、とりあえず、
なんらかの分解ができる。
分解されたものがどちらも既約だと仮定に合わないのでどちらかは分解できる。
そんな風に分解していったとすると、無限の代数集合の列ができる。
それらのイデアルを考えると、無限の増大列になる。
しかるに、多項式の環はネーター環だから矛盾する。
(「おまえ、これからずっと毎日宿題するって言ったよな?
  じゃ、何年たっても死なないってことだよな?」という小学生の会話を思い出す。)
 
・一意であること。
V\hspace{3}=\hspace{3}V_1\hspace{3}\cup\hspace{3}\cdots\hspace{3}\cup\hspace{3}V_m\hspace{3}=\hspace{3}W_1\hspace{3}\cup\hspace{3}\cdots\hspace{3}\cup\hspace{3}W_l として、
V_i たちと W_j たちが一致することを示せばよい。
(ただし、V_iW_j は既約な代数的集合でダブりはないとする。)
こう仮定すると、 V_1W_1\hspace{3}\cup\hspace{3}\cdots\hspace{3}\cup\hspace{3}W_lに含まれることになるが、
すると V_1W_j たちのどれか1つに含まれなければならない。
(でないと、V_1 が既約でなくなる。)
V_1 を含むやつを W_h とすると、それも V_i のどれか(たとえば、V_k)に含まれるはず。
しかるに、ダブりはないのだから、 V_1\hspace{3}=\hspace{3}V_k であり、したがって、 V_1\hspace{3}=\hspace{3}W_h も言える。
これをすべての要素で考えればよい。
なんだか楽しい。