加群2/2

§19 デデキント環と加群

この節では分数イデアルイデアルとよぶ。

命題19.1
イデアル a,\hspace{6}bR-加群として同型であることと、
b\hspace{3}=\hspace{3}ta なる t\hspace{3}\in\hspace{3}K があることは同値。

命題19.2
a が可逆であることと R-射影的であることは同値で、
このとき、a は有限生成なイデアルである。

以下、環はすべてデデキント環とする。

命題19.3
a\hspace{3}\sub\hspace{3}ba\hspace{3}=\hspace{3}bc なる整イデアル c の存在とは同値。

定理19.4
1) デデキントR は整閉ネタ―環で、その素イデアルは極大である。
2) 任意のイデアルは素イデアルのベキ積 p_1^{e_1}\cdots p_r^{e_r} の形に一意的に表される。

定理19.5
イデアル a による剰余環 R/a は単項イデアル環である。

系19.6
任意の整イデアル a,\hspace{6}b に対し、 a\hspace{3}+\hspace{3}tb\hspace{3}=\hspace{3}R なる t\hspace{3}\in\hspace{3}K がある。

命題19.7
入射 i\hspace{3}:\hspace{3}R\hspace{3}\longrightarrow \hspace{3}K の引き起こす i\otimes I_M\hspace{3}:\hspace{3}M\hspace{3}\longrightarrow \hspace{3}K\otimes M において
t(M)\hspace{3}=\hspace{3}Ker((i\otimes I_M)

定理19.8
1) 自由加群の部分加群には捩れがない。
2) 捩れがない有限生成加群 M は階数有限の自由加群の部分加群と同型になる。

定理19.9
デデキントR 上の加群 P については次は同値である。
1) 有限生成で捩れがない。
2) 有限生成で射影的である。
3) 有限個のイデアルの直和 a_1\oplus\hspace{3}\cdots\hspace{3}\oplus a_r と同型である。

系19.10
デデキント環上の有限生成加群 Mt(M) と有限生成射影加群の直和である。

系19.11
単項イデアル整域上の加群 P について次は同値である。
1) 有限生成で捩れがない。
2) 有限生成で射影的である。
3) 階数有限の自由加群である。

定理19.12
デデキントRイデアルの直和 a_1\oplus\hspace{3}\cdots\hspace{3}\oplus a_rb_1\oplus\hspace{3}\cdots\hspace{3}\oplus b_s
同型であるためには、 r\hspace{3}=\hspace{3}sa_1\cdots a\r\hspace{3}\simeq\hspace{3}b_1\cdots b_s となることが
必要十分である。

定理19.13
単項イデアル整域 R 上の有限生成加群 M は、
巡回加群の直和 R/e_1\hspace{3}R\hspace{3}\oplus\hspace{3}\cdots a\r\hspace{3}\simeq\hspace{3}b_1\cdots \oplus\hspace{3}R/e_n\hspace{3}R と同型である。
ここに \{e_i\}e_i|e_{i+1}\hspace{6}(\hspace{3}i\hspace{3}=\hspace{3}1,\hspace{3}\cdots,\hspace{3}n\hspace{3}-\hspace{3}1\hspace{3}) にとることができ、
そのようにするとき同伴性を除いて一意的に定まる。

定理19.14
F を単項イデアル整域 R 上の階数 n の自由加群N を部分加群とする。
そのとき F の基底 \{u_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}u_n\}R の元 e_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}e_r
\{e_1u_1,\hspace{3}\cdots\hspace{3},\hspace{3}e_ru_r\}N の基底をなすものが存在する。
\{e_i\} は前定理に述べた意味で一意的である。

§20 多元環

定理20.1 マシュケの定理
G を位数 g の有限群、K標数g と互いに素な体とする。
そのとき、GK-加群による表現はすべて完全可約である。
すなわち、群環 K[G] は半単純である。

定理20.2
ABCR 上の多元環とする。
もし、多元環準同型 \kappa_1\hspace{3}:\hspace{3}A\hspace{3}\longrightarrow \hspace{3}C,\hspace{9}\kappa_2\hspace{3}:\hspace{3}B\hspace{3}\longrightarrow \hspace{3}C があって、
\kappa_1(A) の元と \kappa_2(B) の元が可換なら、多元環準同型 f\hspace{3}:\hspace{3}A\otimes B\hspace{3}\longrightarrow \hspace{3}C
\kappa_i\hspace{3}=\hspace{3}f\hspace{3}\circ\hspace{3}t_i を満たすものが唯一つある。
もし、C\kappa_1(A)\kappa_2(B) によって生成されるなら、f全射となる。

§21 次数多元環

定理21.1
M から R 上の多元環 A への線形写像 f多元環準同型
T(f)\hspace{3}:\hspace{3}T(M)\hspace{3}\longrightarrow \hspace{3}A に一意的に拡張される。

命題21.2
M\{u_i\} を基底とする自由加群であるならば、
T^p(M)u_{i_1}\otimes\cdots u_{i_p} の形の元全体を基底とする自由加群である。

命題21.3
\Lambda(M_1\oplus M_2)\hspace{3}\simeq\hspace{3}\Lambda(M_1)\oplus \Lambda(M_2)

命題21.4
M\{u_i\}\hspace{3}(\hspace{3}i\hspace{3}=\hspace{3}1\hspace{3}\dots\hspace{3}n\hspace{3}) を基底とする自由加群ならば、
p\hspace{3}>\hspace{3}n について \Lambda^p(M)\hspace{3}=\hspace{3}0
p\hspace{3}\leq\hspace{3}n について \Lambda^p(M)u_{i_1}\wedge \cdots \wedge a_{i_p} の全体を基底とする自由加群である。
\Lambda(M) は階数 2^n の自由加群である。